日中韓はひとつになれない (角川oneテーマ21)

最初は「否定的なタイトルの本なのかな」と思って手に取った。

著者は、NHKのテレビ・ラジオハングル講座の講師の経験のある京都大学大学院准教授の小倉紀蔵さん。

日中韓、東アジアの「共同体」という考え方は、戦時中の大東亜共栄圏や、中国による覇権の中華圏に日本や韓国が取り込まれるという構図につながり危険なイメージを想起させる。

そこには同でないものに対する敵視・蔑視・排除といった論理や感情が強く介在してくる。お互いに異なったままで双方の違いを認め尊重しあいながら、まずは「東アジア共”異”体」というというまとまりを形成して行こうというのが著者の主張であった。

また、著者はその「東アジア共異体」の形成の中核となるのは日本でも中国でもなく韓国がそのために重要な役割を持つという主張を展開している。

さらに「同」を目指すことの危険性について、著者は日本と中国・韓国の間に横たわる性善説の捉え方についても言及している。このあたりも興味深い。

私は中国語と韓国語の学習経験や、両言語の歌(カラオケ)を愛好し、両国や両国出身の友人や知人が居り、日中韓の友好を個人的にも願っており、異なったまま尊重しあうという著者の考え方に強く共感する。